Magnetic Compass 航空機用磁気コンパス
磁気コンパス(Magnetic Compass)は余り使われてないけど、重要な計器です。シンプルで、構造も簡単。そしてちゃんと使えれば、最も信頼の置ける計器。でも実際では使うのも難しいし、理解するのもちょっと大変。そんなんで問題集の問題を元に、説明をしてみたいと思います。
計器飛行ではCompassを使っての飛行が多くなりますから、それなりに理解し勉強はして下さい。Private Pilotを目指している人は「そんな事もあると理解」していれば、だいたいOKでしょう。
もちろん、Private Pilotでも知っておくべき事なんですけど、完璧に使いこなす事までは求められていません。コンパスにはエラーがあって、どんな影響を受けているかを知っていれば十分でしょう。操縦に関してはStraight-and-Levelで安定した飛行中のみCompassが正常になると理解してください。それか、コンパスを使う時は、「水平飛行で安定飛行中だけCompass」が使用可能と覚えて置いても良いでしょう。
コンパスは、磁石が入っており、小学生の時に学んだように北を指してくれます。 速度を変えずに水平飛行をしている時は誤差も少なく、ほぼ正確な方向を示します。
(Un-Accelerated, Straight-and-Level)また、電気やポンプ等の外部からの供給も不要で、かなり重宝する計器で緊急時にでも頼れ、頼れる計器の一つです。
安定しいる状態では間違いなく正確であり、誤差も修正もしますが、
磁石が液体の中で浮遊しているだけなので、色々な影響を受けてしまいます。
Magnetic Compass、が受ける4つの影響、エラー
1)Acceleration Error : 加速や減速時のエラー (Magnetic Dip)
2)Turning Error : 旋回時に起こるエラー (Magnetic Dip)
3)Deviation : 磁場の影響 (機内の装備で)
4)Variation : 磁石の北と北極点(地軸)の違い。
難しそうな事を書いていますけど、普通に真っ直ぐ飛んでいる時はCompassは正確に方向を示しています。 またこれらの誤差の為、方角を示す為にCompassの弱点を補ってくれるHeading Indicatorってのがありますから、通常はそれで飛行するばOKです。 でもHeading IndicatorはGyroって言う物を使ってるだけなので、誤差が少しづつ溜まって行きます。 15分に一度ぐらい、Compassを見て、Heading Indicatorを調節してください。
ただコンパスは上にも書いた様に、複数のエラーが生まれるケースがあります。その為に、Compassを使う時やHeading Indicatorを微調節する時は、水平飛行で速度が安定している時に行ってください。
Magnetic Dipによる誤差
基本は磁石が向くのは「北、北極点」。でもその北は地面に平行じゃなくて、地面よりも下にあります。 (地球は丸いから、地球の横から見ると北極点は下になるでしょ。) この磁石の極点が下に有る為に、飛行操作中はコンパスに誤差が生じてしまいます。 この下を向く傾向を「Dip, Magnetic Dip」と言います。
北半球では北の極点に近い為、北の方向が下になってしまいます。 実は南側も下を向いているのですが、距離の差が有るので北側の下がり、北を下とするDipが強くなります。 これが南半球でしたら、南極に近いので、南方が下がります。 そして、赤道上ではバランスが取れてDipが0度になります。 実はこのDipの角度は経度と同じになります。
恥ずかしながら、掲示板で指摘されるまで存在を知らなかったのですが、 普通では、コンパスにDip-Correction Weightと言う「重り」が反対側に付いています。この重りのお陰で、コンパスはあまり傾く事が無く、見やすく表示されます。 コンパスには北半球向きと南半球向きが販売されています。(多くの飛行機部品ショップのサイトはアメリカを中心にしている為、自動的に北半球向けとなるのでしょうけど、一部のサイトで北半球向けと南半球向けが販売されてました。)
このMagnetic Dip(磁極点が下)によって、航空機のMagnetci Compassでは誤表示となる場合があります。これには上記で書かれている1番のAcceleration Error と 2番のTuring Error があります。
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北は水平線の方向に有るような気がしますが、実際のコンパスが指す方向は35度ぐらい地面の下の方になります。 角度は飛行している緯度に比例します。 |
1)コンパスは磁石のお皿が水の中を浮遊して、北を示します。(磁場の方向を示す。)
2)地球は丸い。(意外と、これが問題を作ります。)
3)コンパスは北を示すが、実際の北は下向きです。(右の絵を見てください。)
4)緯度と同じ角度だけ下向きになります。(磁場が下向きになる)
5)緯度0度の赤道上では、南北のバランスが取れて、地面と平行になります。(下に0度)
6)もし、北緯30度の所を飛行すると、北は地面より30度下になります。
7)この傾きを軽減する為に、反対側に重り、Dip-Correction Weightが付いています。
8)一定の速度で水平飛行している時は、コンパスは水平で北を向きます。
Acceleration Error 加速エラー
(Deceleration Error 減速エラー) の場合
9)速度を変えると、慣性(Inertia,勢い)でコンパス内部で色々と部品が動きます。
10)飛行機が加速すると、コンパスも加速します。
11)
コンパス自体は液体中に浮遊しているので、重たい物は遅れて反応します。
12)Dipを修正する為に、南側に「重り」が付いています。
13)重量の違いの為、重たい方は遅れて動き出します。その為、加速中は表示が狂います。
14)南北のHeadingでしたら、問題は出無いのですが、東西の時に大きく反応が出ます。
Headingが東西の場合に影響が大きくなります、、、南北では影響はありません。
15)動くと言う事はコンパスが少々回転してしまう事なので、表示が一時的に狂う。
16)加速すると、一時的に北を向く。 Accelerate North
16−理由)
加速すると、「重り」が遅れて移動します。すると重たい方が、表示面に近づきます。「N」表示された重たい方が近づいて表示されます。
17)減速すると、反対に南を向く。 (同じ様な理由)Decelerate South
18)覚え方 ANDS、「英語のandにSを付けて」
18−説明) AccelerationするとNorth、 DecelerationするとSouthを向く、 と覚えます。
19)真北や真南を向かって飛行している時は、加速エラーはありません。
19−説明)南北を向いて飛行している時は、重りと軸が同一線上なので、コンパスが加速しても変化しない。
ANDS : Accelerate North, Decelerate South
Turning Error 旋回エラー
磁石は北の方向を指します。しかしMagnetic Dipの影響でコンパスが傾くとコンパスは北を向こうとして、地面の方向に向いてしまいます。 これが旋回エラーの元になります。
始める時の、旋回エラー (7からの続きで)
9)旋回しようと飛行機を傾けると、コンパスも傾く。
10)傾けたと同時に、コンパスは北を向こうと下に向こうとします。
11)下向きに動こうとするので、コンパスが回転し、表示に狂いが生じます。
12−北)北向きの方向から旋回すると、一時的に反対方向を示します。
12−北)旋回が始まると、早いペースで旋回の方向を示し、東西の時に正しく示します。
12−南)南向きからだと、航空機を傾けるだけで旋回する前から旋回の方向を示します。
12−南)旋回が始まると、ゆっくりと旋回し、東西の時に正しく示します。
13)東西を向いている時は傾けても、エラーは出ません。 この方向からの旋回でも、最初は正しく表示します。
東西の時は、北が真横になります。 そこで機体(磁気コンパス)を傾けても、北は真横にあるので、Compassは傾いて北を向くんですが、傾く方向が既に真横と同じ方向なんでエラーは生じません。
090度や270度では磁気コンパスのN極は、既に同じ方向を示しているので、下に向こうとしても、それが正常なので誤差は発生しません。
(なお、000度と180度(南北)でエラーが最大になります。)
旋回を終える時、Turning Error 旋回エラー
14) 東西の方向で旋回を終えるなら、エラーが無いのでそのまま終わる。
15) 北向きで終える時は、表示よりも早めに終える。
16) 南向きで終えるなら、行き過ぎてから終える。
17) 覚え方:
「北へは早く」「南は遅く」旋回をやめる。
「北は寒いので早く終わって、南国は楽しいので遅らせろ。」と覚えてください。
英語なら「Turn to North, Under Shoot. Turn to South, Over Shoot. 」ですが覚えにくい?!
エラーの角度の最大は「その場の緯度」と同じになります。
北向きで旋回を終えたければ、緯度の分だけ早めに旋回を終えます。
何もしなければ磁石は水平で北を向きます。
「小学生の時にした実験で、水の上の磁石やコンパスは水平だったでしょ?」
普通の時は問題が無いのですが、
飛行機の旋回では傾いているので、同じ状態とは言えないのです。
なお、ここの解説は全て北半球を想定しています。 日本やアメリカ等の地域です。 「Northern Hemisphere Only」 南半球なら逆ですよ。

他のMagnetic Compass、磁石コンパスのエラー
Deviation 自差
飛行機の中には無線機、エンジンなど磁場に影響を与える物が沢山あります。 飛行機自体の磁力によって発生する影響を自差と言います。 Lines of Magnetic Forceとは磁場の向きの事です。 普通のコンパスをTVやラジオ、スピーカーとかに近づけると向きが変わるでしょ、それがDeviationの元です。
Variation 偏差
「地図の北」と「磁石の北」は同じ方角にあるが、実際にはかなり離れています。
その為、地図上とコンパスが示す北とは、かなりの差があります。
それを偏差、Variationと言います。
東よりに磁北が見えるようでは東偏、Eastery Variationと言います。チャート上ではMagenta(赤茶色・マゼンタ)の点線で描かれています。(覚える必要は無いですけど、Isogonic Lineと言います。)
左の図は東海岸のチャートです。 「10°W」と書いて有るのがVariationです。 マゼンタ色(赤茶色)の点線上では磁石の北は、地図よりも左に10度に傾いていると示しています。
アメリカ本土では25°E〜25°Wと地域によって大きく違います。
サンフランシスコ付近では13°E(東偏13度)
日本では西偏です。5〜9°W
地図の北を真北(True North、TH)、磁石の北を磁北(Magnetic North、MN)と言います。
Variationはわずかですが、常時、変化しています。 数年毎に0.1度ぐらいが多いかな。何時でも磁石の北は移動してるんです。目には見えませんけど。
Preflightでの点検
Magnetic Compassは故障が少ない計器ですが、確実なHeadingを教えてくれる唯一の計器です。 Heading Indictorは使い易くて便利な計器ですが、誤差が大きくなって行きます。コンパスにもエラーは有りますが、水平飛行になれば、勝手に元に戻ります。そんな便利なCompassですが、離陸前には問題が無いかを確認する必要があります。
1. Compassは摩擦が無い様に、液体の中で浮遊しています。 Preflightではその液体が漏れていないか、蒸発して中の液体が減っていないかを確認します。
2. そしてTaxi中に、そのCompassが航空機の旋回に合わせて自由に、抵抗無くスムーズに動くかを確認します。
- Taxi中はBankしませんので、Magnetic Dipによるエラーは有りません。
- 北向きのHeadingで飛行中の様に、旋回の反対方向を向く事はありません。(Dipが無いので)
- また、Bank角が無いので緯度と同じだけ傾く事は有りません。 (バランスの関係で多少の傾きはあります。)
Kobayashiさん、New ZealandのDAIさん、 ハワイのNo Rain No Rainbowさん、指摘と情報提供ありがとうございました。
以前は、私が間違えて理解しており、間違えた説明が有った事をお詫びします。