CFIT Controlled Flight Into Terrain
Controlled Flight, 意識しての飛行、 操縦不能では無い状況、 操縦が出来る状態での飛行
Terrain 地面、山、水面、障害物、
地形。 飛行機から見ての地面や山、丘となる部分(Ground)や障害物
CFIT 操縦が出来る状態なのに、山や地面に衝突してしまう事故。
これも CFI refresher Clinic (CFIの書換え講習) に出てきた項目の一つです。ここではCFITに関してのお話をしたいと思います。
- CFTの定義 (Definition)
- CFIT Type 事故に遭遇しやすい飛行
- CFIT事故の起こる理由
- 離陸から上昇の間に起こる、CFITの危険性
- 巡航・クルーズ(Cruse)中に起こりえるCFITの危険性
- 進入(Approach)から着陸中でのCFITの危険性
Definition, CFITの定義
CFIT (Controlled Flight into Terrain) は
・ Airworthy Aircraft (適切に飛行できる航空機)が
・ Qualified Pilot (適切なパイロット)によって操縦されている場合に
・ Terrain (地面、山、海面、障害物) に対しての
・ Inadequate Awareness of Impending Collision (パイロットが衝突の可能性に気が付かずに。もしくは誤解して)
飛行を続けて、衝突してしまう事故の事を言います。
気が付かずか誤解して飛行している場合が多いので、高速での衝突が多いので、死亡事故になりやすい。
FAAの統計では小型機の事故の17%を占めます。Airlineでも起こりえます。
特にApproach(進入)、着陸中に起こりやすくCFIT事故の41%を占めます。
詳しくはFAAのAC 61-134 (GA CFIT Awareness)へ
言い換えれば、CFITとは「飛行機や操縦士の資格に問題が無いのに、飛行機が衝突・墜落事故を起してしまう事」です。
CFIT Type CFITに遭遇しやすい飛行は
- VFRしか飛行できないパイロットが、Marginal VFR (ぎりぎりなVFR状態) か IMC(計器飛行状態)で飛行する時。
- IFRパイロットが、IMCで飛行する場合
- 天候は良いが、低空飛行をしている時
1. VFRパイロットが天候の悪い所に飛行していく時に起こりやすく、IFRを持っている者でも陥る事もあります。 天候が悪化しているのにVFRで飛行を続け、雲の下を誤魔化して飛行を続け最終的に地面や水面、障害物に衝突してしまうケースです。シーリングが1000フィート前後でVFRで離陸したりした時や、雲があるのに無理して山越えをする時が、最も典型的でしょう。
ちなみにアメリカでは 「Scud Runnning」 と言います。 イラク軍のスカッド・ミサイルから来たのでしょうか、よく使われる単語ですよ。残念ながら知り合いのパイロットがこれで命を落としていますので、みなさんもご注意を。
2. IFRパイロットであっても、準備不足、技能不足、最近の飛行経験不足でCFITに遭遇してしまうケースがあります。
・
適切なDeparture Procedure (離陸手順)を無視した場合。
・
決められた飛行手順を無視したり、Situatioinal Awareness(飛行状態)が欠けてしまった場合。
・ 着陸をしようとする時に、操縦を誤った場合が考えられます。
恥ずかしながら、私も計器飛行でCFITに遇いそうに成った事が2度あります。 今から考えれば馬鹿な話ですけど、完璧なるSituational Awarenessの欠落と準備不足ですね。 (下記の事は計器飛行パイロット向けですので、Privateの方は無視してください。)
一つ目はIFRで離陸した時に起こりました。 友達の結婚式に行くのに大学の友達を乗せて午前中に離陸しました。天候はMarginal VFRでしたので、無理をせずにIFRで離陸しました。 離陸後1500フィートぐらいで雲に入ったまでは良かったのですが、雲中(IMC)でなぜか「太陽って真上にある物だよな?」と思った瞬間から頭の中が変になりました。午前中だったので、太陽の光が横から来ます。雲中でしたが太陽の光は横から来ます。「あれっ?」と思ったら上下が分らなくなるVertigo (Spatial Disorientation).になってしまった。Departureは呼んで来るし、操縦を知らない友達も居る。 心の中でパニクってました。 「計器飛行では、自分を信じるな! 計器を信じろ」と何度も唱えて何とか、VFR-on-Top。雲を乗り越えました。 何度もIMCの経験が有ったんですけどね。それでも経験不足だったんですね。
もう一つは、山の中にある空港からIFRで離陸する時に、手順を知らずに山に衝突しそうになりました。 雨の降る日で天候は完璧なIFR.の時にIIFRクリアランスを得て、北CaliforniaのUkaih空港(UKI)から近くのVORTAC (Mendocino VOR,、ENI)を通過して、Airwayに入るルートを貰ったのですが、低空ではRadarは届きません。 それに山の中なので、運が悪ければ山に衝突してしまいます。離陸する前から気が付いていたので、完璧なCFITとなる所でした。 でもNon-RADARで山の中のNon-Tower空港から離陸する方法なんて教えてもらってません。無理やり行くしかないのか、天候が良くなる事を祈るのか方法なんて知りません。でも当日は雨の降る完璧なIFR。Piper Archerで180馬力で馬力もあり単独飛行と軽く、ドキドキでしたがVxで飛行して何とかVORTACにたどり着きました。 後でどう考えても変だと思い、猛勉強して答えは見つけましたが、事故ってたら終わりでしたよね。 今から考えてみればUkaihのFSSの人に聞けば良かったのですが、その時は考えもしませんでした。
IFRパイロットの皆さん、皆様なら離陸からVORTACまではどう飛行されますか? VORTACは山の上です。頭の中では山の標高がもっと高いと想定して考えてみてください。 答えはあえて書きませんので、考えてみてください。 クリアランスは"Cleared to SJC Airport, Procedure to Mendocino VOR, Vector 494......."のような記憶が残っています。
3. Low Flying in VFRでの低空飛行
農薬散布などで仕事として、飛ぶ必要な方。 パトロールなどで、電線や障害物の近くを飛行される方も居るでしょう。 しかし現状では違法行為の可能性が高いですが、友達や家族に見せびらかす為に低空飛行をしてしまう者も居るでしょう。低空飛行の問題点には大きく二つあります。
・ 危険性を感知してから回避する時間が無い。 (衝突する寸前まで、電線が見えないとか)
・ 他の危険性に気が付いても高度が極端に少なく、対処が出来ない。(エンジンの故障やその他の予想外の出来事)
悪意や質の悪い運転や操縦を”Reckless”と言います。 また低空で飛行する事を、"Buzzing"と言います。雑音を撒き散らすと言う意味も含まれており、結構使われる単語です。
この様なこと以外にも、山岳地帯を飛行するのも危険です。一般的な訓練機で10,000 feetを超えるのは危険です。 乱気流が多く発生し、下降気流につかまると一瞬で、数千フィートの高度が落ちる事も珍しくはありません。 必要がある際は、必ずHigh Density Alitude(高い密度高度)での性能の低下を理解し、また飛行機の性能に多くの余裕がある事を確認してください。
例えばですが、Cessna 152 では一応、12,000フィートまで飛行する事が出来る事になっています。しかし、7000フィートぐらいから上昇性能がかなり悪くなって、10,000フィートぐらいでアップアップしてしまいます。 Fuel Injection式のCessna 172SPでも馬力の低下が顕著になり、高度を保つのにも機首を上げた状態になるので、速度も落ちてきます。10,000Feet以上の高度が必要な場合は注意が必要です。
1番と3番で、よくある事故のパターンとしてはValley Flyingと言うのがあります。 山越えをしようとする時に飛行機に性能が無いと、パイロットは本能的に標高の低い所を飛ぼうとします。 山岳地帯なら谷間(Valley)となりますよね。運がよければ、そのまま山越えが可能になるのでけど、同じ飛行機でも毎回可能とは限りません。 下降気流、気温、重量、標高などの原因で高度が十分に得る事が出来ない時が問題です。 山の標高が低い所では、その谷間も広いのですが、無理をして飛行を続けると、標高が高くなって地面との距離が狭くなります。しかも山の谷は標高が高くなると狭くなって行きます。それに早目に気が付いてU-ターンをすれば良いのです。でも無理をし続けると、
・ 地面との距離が狭くなる。
・ 谷間が狭くなり、引き返すにも、U−ターンするのに、かなりのバンク角が必要となる。
・ バンク角が大きくなると、上への揚力(Lift)が少なくなるので、もっとエンジンの出力が必要になる。
・ この場合だと、エンジンは既に全開で、余裕が無く高度が保てない。
・ 地面との距離が、元々少ないので、山か木との激突となってしまいます。
早目に決断をすれば、高度にも余裕があって、谷間の幅も広いので、余裕で安全にU-ターンする事が出来たでしょう。
この状態に雲が有ると、もっと制限が出てきます。 雲に入らないようにする為に、もっと低い高度を飛行する羽目になります。谷間が続くように見えても天候が悪ければ前が見えずに、急に標高が高くなっている可能がありますが確認する事は困難で、その時にはチャートを見る暇も無いでしょう。 U-ターンするにしても、低高度で行う必要が出てきて、かなり危険です。 良い天気が有ると祈っても、実際は良くなる事はまず有りません。 雲の中を突っ切れば、VFRがあるかも知れませんが、VFRパイロットが雲に入るのは違法である前に、危険でまず操縦不能になるでしょう。 雲中でのVertigo ( Spatial Disorientation)は半端じゃ有りません。 私もVFRでの雲中飛行の経験者ですから良く分かります。(Student PilotでSoloの時ですが雲の中に入ってしまい、正直、命が有るのが不思議なぐらい怖い思いをしました。)
Six Basic Causes of CFIT Events CFITに陥りやすい6つの要因
一つだけの要因で起こるよりも、複数が重なって起こる場合が多いです。
Loss of Situational Awareness.
状態が分らなくなった状態でもっとも大きな原因です。 地面や水面、地形、障害物との飛行機の位置関係が分らなくなる。
Cockpit Distractions.
コクピット内での混乱や邪魔。 運用に必要なOperational Distraction (ATCとの交信、他の飛行機との衝突回避、操縦自体、故障箇所が起す混乱など。 また操縦に必要の無いNon-Operational Distraction (関係の無い雑談や客からの邪魔な言動)
Complacency.
自信過剰から来る姿勢や日常的な事で気が抜ける状態で飛行が疎かになる状況。過去に何度も行っている飛行で、危険性を忘れる状態。どんな事でも、どんな簡単で当たり前の事でも毎回繰り返して安全性を高める必要がある。例えばチェックリスト。慣れている空港に行く時に気象を確認するのを怠るような状態も。
Lack of Technical and/or Operational Experience.
経験不足。 操縦だけでなく、搭載されている装備の使用方法、離陸前に行う使用する空港の下調べを怠る。ATCとの交信で十分な訓練や勉強をしていないとか。 なお、管制官は危険と分っていても、直接的に危険だとは余り言いません。たぶん、法律か何かで言う事が禁止されているのでしょうか、私は管制官では無いので不明です。その代わり、間接的には良く伝えてくれます。
Lack of Adequate Preparation.
準備不足。計画を正しく作っていない。 気象予報を得てないか、確実に理解していない。 チャートを離陸前に目を通さず、行き当たりばったり。 飛行前には、何が起こるか予想し準備する事が必要で、また予想外の事に対しての準備も必要です。
Confusion.
頭の中の混乱。 上記の項目が複数重なって、どうすれば良いかと混乱してしまう。必要と思われる情報があやふやになったり、ハッキリとしない場合。
Takeoff and Climb 出発・離陸時のCFIT
CFITで出発時に遭遇するケースは全体の25%ぐらいです。7つの大きな要因が考えられます。
- Incomplete or inadequate review and briefing of the departure procedure. 出発手順を十分に理解していないか、準備不足。
- Terrain around the departure airport. 空港の回りの、山や障害物
- Required aircraft performance. 航空機の性能
- Density altitude. 密度高度
- Turbulence and departure altitude restrictions. 乱気流や高度制限
- Distractions in the cockpit below 1,000 feet AGL during the departure. 離陸直後で1,000 feet AGLに達するまでに起こるコクピット内での混乱・操縦を妨げる様な出来事。(Distractions)
- Failure to plan for an unexpected return to the departure airport. 想定外を予期して、離陸空港へ引き返す際のプランの不備。
最後は特に、IFR飛行で重要とされます。他の項目でもIFRでは特に注意する事が多いです。 もちろん低空での飛行ですからVFRでも注意は必要です。 離陸時のCFITを防ぐ方法には大きく分けて4つが考えられています。
- 離陸手順(Takeoff and Depurture Procedure)を声に出して確認してみる。特にIFRではコース・高度・最初の旋回地点。VFRでも空域が混雑している所でも確認を離陸前にしておきます。
- 飛行機の性能が十分か? IFRなら必要とされるClimb Gradinent以上の性能が有るか確認する。 (距離や高度) VFRなら障害物や高い山を飛び越える方法を検討しておく。
- 離陸手順を声に出して確認し、可能な限り予測できる周波数を事前に合わせる。(ATC無線やNavigational Station)、航法計器のコース(OBSなど)を合せて置く。 (私なら、次の手順や周波数が分るなら、それらも分りやすくメモを取っておきます。)
- IFRやVFRでも天候が悪い場合に備えて、離陸した空港に着陸する事を想定して、準備をしておく。着陸手順、使用滑走路、アプローチ法、航法施設の周波数うあ角度(BearingやRadial)を声に出してでも確認をしておく。
Cruise 巡航飛行中、離陸と着陸の間の真っ直ぐ飛んでいる間
飛行の間では、もっともCFIT事故の心配が無い間です。それでも4.5%は、このCruise中に起こっています。このCruise中のCFITの装具するのには、6つの要因が考えられます。
- Losing Situational Awareness. 飛行状況が分らなくなってしまう。
- Becoming disorientated. 迷子やVertigoの様に、訳が分らなくなる。(例:悪天候や雲の中に入ってしまったり)
- Misreading or misinterpreting published minimum altitudes. 最低飛行高度を勘違いする
- Flying into deteriorating weather conditions, requiring a descent to maintain VFR below the cloud layer. 天候が悪化しても飛行を続け、雲(Ceiling)の下を飛ぶ必要が出てしまう。
- Overestimating aircraft performance capabilities. 航空機の性能を過信してしまう。
- Unplanned diversion to a different destination, resulting in a flight over unfamiliar terrain. 何らかの理由で目的地を変え、不慣れや準備をしていない場所を飛行する。
Cruise中のCFITを回避するには
- 離陸前に飛行高度を確認する。
- 安全な飛行j高度を選ぶ。(山岳地帯なら最低でも2,000 ft、 平野部なら1,000 ft) 計器飛行中ならMinimum Sector Altitude、MOCA, MEA以上を飛行し、Situatiinal Awarenessを失わないように。
- 山岳地帯を飛行する必要があるのなら、必ず離陸前に飛行機の性能、特に上昇性能を注意する。 頂上付近では、風が強く吹いている可能性も高く、下降気流が、飛行機の上昇の応力よりも強い場合があります。特に高高度の山岳地帯では。
- 必ず逃げ道「Escape Route」を考えておく。 通常の飛行なら予備空港を選定し、準備をしておく。山岳地帯なら早目に引き返すかルートを変更する勇気を。 一番簡単なのは、早目の180度のU-ターンです。 山岳飛行でも、間違えて入った雲中飛行でも。
Appraoch and Landing 進入から着陸までの間。到着
CFIT事故に最も遭遇しやすいのが、下降から着陸までの間で61%がこの間です。特に最終着陸から接地までに40%も発生しています。この間での最も大きい5つの要因があります。
- Improperly briefing and verbalizing the descent and approach procedure. 下降方法と進入方法の確認不足
- Using an excessively high rate of descent on the intermediate and final approach segments which leads to an unstable approach. 急降下で進入コース(Approach Course)に入り、進入が不安定になる。
- Responding to distractions in the cockpit below 1,000 feet AGL. 1,000 feet以下でのコクピット内での騒動(Distraction)
- Neglecting to brief and review a missed approach procedure. Missed Approachの確認を怠る。
- Neglecting to brief and review a transition from instrument to visual conditions. IFRからVFRに移行する手中の確認を怠る。
主にIFR、計器飛行状態で起こります。上記も急降下や1,000 feetの件を除いて、大体がIFR飛行に関係する物です。
Private Pilotを目指されている方は、Traffic Patternに入る前に手順を復唱し、低空での操作の準備をしましょう。 また天候にも気をつけ、シーリングが2,000 feet以下とか、Visibilityが5マイル以下の場合は飛行しないとかを決めて置けば、多くのCFITは防げるでしょう。 後は着陸寸前やFinalで客からの邪魔が入らないように、客に対する心配りを忘れないように。
ApproachでもCFITの回避手順がありましtが、全てIFR・計器飛行向けだったので省きます。