Hyperventilation 過呼吸に付いて (追加:ペーパーバックは危険)
先にお詫びと注意
過呼吸に陥ると紙袋を口と鼻を覆って呼吸するれば良いとされていました。2013-01で、FAAのサイトからAIMを見るとPaper Bagと書かれており、私もその様に教えてきました。
が、このサイトの利用者さんから「これは間違いで、死亡事故にもなる」と教えて頂きました。正直、驚きです。 まだFAAのAIM(8-1-3)ではPaper Bagと明記されていますが、日本のAIM-JAPANは削除されたそうです。(2013年正月)FAAのAIMではControlled Breathingと書かれているので「間違い!」と断言する事は行き過ぎですが、誤解しない様な注意が必要です。
指摘して頂いた方から教えて頂いたのですが、日本医師会のホームページとNHKのサイトで説明されています。この二つのページを元に私も説明をして、正しい知識を伝えたいと思います。
日本医師会より : HNKより :その他の参考 緊急科専門医さんのブログより : アメリカの医療サイト
なお、このページは長いので、以前に説明したページが有ります。 お急ぎの場合はそちらへ。
過呼吸、Hyperventilationとは?
ストレスなどの原因で呼吸過多になり、頭痛やめまい、手の指先や口のまわりのしびれ、呼吸困難、失神、筋肉の硬直、パニックの悪化など、さまざまな症状を起こすものです。発作の間は「空気が吸い込めない」や「強い体の変調」などと感じて、「このまま死ぬのでは…」といった恐怖にかられ、過呼吸が悪化すると悪循環に陥ります。しかし、これが直接的に命にかかわることはありません。
- 外部から強烈な心理的ストレスを受ける。
- 呼吸が浅く、極端に早くなります。
- 大量の二酸化炭素が排出される。
- 血液中の二酸化炭素が減り、
- 頭痛、痺れ、めまい、呼吸困難、硬直などの症状が現れる。
- 「呼吸が出来無い」、「生命の危険」と考える
- 精神的に追い詰められて、
- 一段と深いストレスを感じ、
- より深く過呼吸状態に陥る。(2番の状態に戻り、悪循環に入る)
『呼吸が速く浅く』なり、過呼吸の状態になります。この場合では空気を吸い込みすぎて大量の二酸化炭素が放出されます。すると血液中の二酸化炭素が少なくなって様々な症状が発症します。原因は不安や興奮、緊張、恐怖などで、これが自律神経や呼吸中枢に影響します。飛行中に機材の故障など、環境の悪化、管制官からの怒り、生命の危険など、極度の不安を感じるた時に起こりやすくなります。(時には肉体的な疲労から起こる事もあります。)
発症すると「呼吸が苦しい」と感じその不安感から無意識に呼吸を早くしようとします。それがさらに症状を重くして「生命の危険を感たパニック」に陥り、不安が増大するといった悪循環に陥ります。
対処法
Paper Bag、紙袋のリスク
以前は、発作が起きたときは紙袋で鼻と口にあてがい、袋の中で呼吸を行うペーパーバッグ法が有効だといわれていました。しかし最近では窒息して死亡に至るケースもあったことからおすすめすることはできません。ご注意ください。 |
過呼吸は発作時には激しい症状が出ますが、適切な処置をして原因を取り除けば回復します。
正しい対処法は『ゆっくり吐く事を意識』することで、二酸化炭素不足を解消できます。 NHKでのお薦めは
『息を吐くことを意識 「吸う:吐く」が1:2になるくらいの割合で呼吸する 1回の呼吸で10秒くらいかけて吐く
(息を吐く前に1〜2秒くらい息を止めるくらいがベター) 胸や背中をゆっくり押して、呼吸をゆっくりするように促す。』 ポイントは、吐く事などを意識して呼吸を整える事です。
- 吐く事を意識
- 十秒ぐらい掛けて、ゆっくりと息を吐きます。 (吐く方で、吸う方よりも)
- 可能なら吐く前に、1〜2秒を止めるのが良い。
- 吸うのを「1」とすれば、吐くのを「2」となる様に、と吐くのを多めに。
- 過呼吸は精神的な物で、リラックスが出来れば回復に向かいます。
- 大声で話す。 言葉を発声している間は、過呼吸の状態では無いそうです。
- 歌を歌う。 大声や歌を歌う事で、呼吸を整えます。
- 補助供給酸素、Supplimental Oxygenを使う!?。
。。が私には正しい答えが分りません。
- 医療の世界では酸素モニター無しでの使用は否定されてます。
- 航空の世界ではFAAのサイトの数カ所で100%Oxygenで呼吸と書かれて居ます。
- 知り合いが勤める航空会社のマニュアルでは「「乗客に酸素マスクを使用するのが適切でない例の一つとして挙げられている」と教えて頂きました。
- 酸素供給システムに異常が無いかと確認を怠らない。 (酸欠との区別が難しい。)
- 高度を下げる。(空気が薄すぎる上空は誰にも良くないでしょう。)
- 紙袋は危険ですが、紙袋を信じている人に説明する暇は無いでしょう。その時は数回の呼吸だけで中の空気を入れ替えるとかが良いのでは無いかと思います。
紙袋、Paper Bagは危険!
紙袋、Paper Bagは有効な対処法として世よく知られています。 私もつい最近まで、この方法が有効だと思って居ました。 しかし、この紙袋を使う応急処置が原因で死亡事故が起きています。死因は窒息死です。
なぜ窒息死の事故が?
過呼吸では激しい呼吸を繰り返すうちに『血液中の二酸化炭素が不足』します。でも二酸化炭素は生命にとって必要不可欠な物質です。不足すると頭痛、しびれ、めまい、筋肉の硬直などの過呼吸の症状が現われ、最悪の場合は心肺停止する事になります。この二酸化炭素の不足を解消するのに脳は「呼吸そのものを止める命令」を出し、二酸化炭素の放出を抑えようとします。でも意識を司る大脳皮質は反対に「息苦しさを感じて呼吸を続けよう」とします。この矛盾した状態が過呼吸でもあります。
二酸化炭素不足を解消なら、紙袋を当てての二酸化炭素の多い空気をすう呼吸は正しい様に感じますよね!? でも、これが誤解だそうです。
実は「苦しい」と感じるのは、血液中の二酸化炭素が一定の量以上に増えた時なのです。
酸素量の低下じゃなくて、二酸化炭素の増加で苦しさを感じるのです。
その為に、紙袋の使用は酸欠の危険性が急増するそうです。
過呼吸の状態では血液中の二酸化炭素が少ないので、(興奮が収まってると)苦しいと感じるまでの時間が延びます。でも息を止めたり、紙袋内の酸素の少ない空気を吸っている間に血液中の酸素は減ります。
私が想像した紙袋の使用で、危険なのは小さい紙袋を使用してしまい、酸素が直ぐに激減した場合や、症状が治まっても不必要に長時間使ってしまった。 そして、同時に既に酸欠状態に陥っていたとも考えられると思います。
血液が過呼吸状態だと血液中に二酸化炭素が多いので「息苦しい!」と感じる前に酸欠になり、最悪の場合窒息死してしまう危険があるのです。興奮が収まった直後は血液中の二酸化炭素が少ないので、息苦しさが少ないので酸欠でも気づき難い状態です。しかも発作の直後で判断も鈍っています。紙袋を使用すると、袋内の酸素量が少なくなりますので、窒息死の危険性も出てきます。
過呼吸の対処法は紙袋は厳禁で、精神的に落ち着き、呼吸を整えるのが方法です。
また別の考えですが、紙袋の事を知らずに、逆に紙袋に対してパニックに陥る人も居ます。 元々、紙袋の使用は良くないので、この様な人に使うのは逆効果しか有りません。
復習 「ただ紙袋で酸欠になるとは考えにくいですが?」との疑問に対して
私個人の考えですが「長めに紙袋の中だけの酸素を使ってると酸素が欠乏するのでは?」と考えています。理由は
- 息苦しさは、血液中の酸素不足では無くて、二酸化炭素の増加で、、、
- 過呼吸の状態だと、血中の二酸化炭素は少ない、、、
- 息苦しさは「酸素不足」では無く「二酸化炭素の増加」で感じる
- 紙袋で呼吸すると、苦しさは感じないけど、酸素は確実に減っている。
- それで気が付かずに、酸欠で危険な状態になる。
- しかも過呼吸の発作の後で、精神的に適切な判断が出来無い。
- しかも、紙袋を過信しすぎて、酸素が減った事に気が付きにくい。
- 「苦しさの少ない酸欠状態」と「弱った判断力」とで窒息・酸欠が起こる。
- 第三者が紙袋を押さえてると気が付かない。
- ビニール袋は密閉性が高いので最悪。
- なお、何も知らない人には「紙袋も脅威」に感じ、逆に不安が増大する場合もあります。
過呼吸は精神的な影響が多いので、紙袋でも良いので他に意識を分散させて、パニックを治めるのも方法の一つだったのかも知れませんね。私の推測ですが、長い間に紙袋が良いとされて来たのは、恐怖から少しでも意識や心をストレスから遠ざける事に意味が有ったのでは無いかと思います。間違えてもビニール袋は厳禁です。
操縦士や貴方が過呼吸に陥った場合は、紙袋は危険と認識し、避けて下さい。 過呼吸は劇的な症状ですが、呼吸が落ち着けば収まります。
なお、一般の人が過呼吸に陥って意識を失っても、その時点でパニックや恐怖から解放されて、呼吸は元に戻るそうです。ただ、操縦士が意識を失うと危険です。 また呼吸が元に戻っても、酸欠で無いと言う証明は有りませんので、高度を下げて、可能な限り早く着陸しましょう
FAAのAIM(8-1-3 b)で"controlled breathing in and out of a paper
bag"と記載されているのは、「CONTROLLED」と書かれている部分が肝なのかと思います。
過度に使う事は推奨していない書き方です。ただ、読み方には注意すべきです。
なおFAAのサイトを検索すると、過呼吸時での予備の供給酸素使用(Supplemental Oxyegen)に関しては「100%酸素で呼吸をする」と、書かれた記述が複数、有りました。 しかし医療関係の記事では「酸素飽和度のモニターを使わない」時の100%酸素の使用は禁じています。 (そんな物は飛行機や自宅にも無いでしょうから、酸素の使用で特殊な事をするのは危険なのでしょう。) 医療での専門知識も無く、過呼吸の経験も無いので私には判断が出来ません。Supplimental Oxygenが有る飛行機を操縦する時は、よく知っている操縦士や飛行教官と相談して下さい。
問題はCheckride。 これも私の意見ですが
FAAのAIMではControlled Breathingと書かれて居るのですが、
このControlledの部分で誤解が生じて居る可能性があります。FAAが紙袋の危険性を認識しているのか、それともControl Breathingと言うフレーズが注意事項なのかは、1人の教官では判断が出来ません。(今の所では、FAAからは教官や学校に特に強い報告や指示は無いそうです。) 私は日本の操縦士さんから指摘を受けて、調べました。するとNHKなどが報道しており、日本のAIM-Japanから紙袋は削除になったと思います。
アメリカではと調べてみると、1989年には論文が発表されて、医療現場では使われないとの記事も有ります。 そう考えると日本だけの事では無いと考えられます。 アメリカ人の知り合いで、医療機関で働いている知人に聞くと、紙袋の使用は禁じられているとの事です。
飛行試験で、試験管から運悪くHyperventilationを聞かれてしまうと、英語に弱い日本人だと、対処法の回答は"Relax and slow down Breathing" か "Relax, Extend Exhauling"が回答になるでしょう。 試験管に「Paper Bagは?」と聞かれると聞かれると難しい。 AIMにはPaper Bagは書かれて居ますし、多くの試験管、教官、先輩操縦士はPaper Bagが頭の中に出てくると思います。
個人的に、他の部分で問題が無ければ、Hyperventilationだけの事で不合格にするとは思えませんが、私が判断する事では有りませんので、どの様になるかは未知数です。
英語が強いなら、日本人でも説明は可能でしょう。 しかし、渡米後2−3ヶ月の日本人で発音が悪いのが普通で、単語数も限られている。この様な状態で、Paper Bagの説明なんて期待は出来ません。 試験管が紙袋を強く信じているなら「変な英語で何を話してるんだ?やばいぞ」となる可能性も有るでしょう。
解決策にはPaper Bagに付いての危険性を書いたサイトや書籍のコピーを準備しておく事かなと思ったりします。 試験対策は貴方の飛行教官と相談して下さいね。 事前に試験管と確認するのも方法かも知れません。 "Treatment Hyperventilation Paper Bag" と検索して見て下さい。 それで、説明が理解出来る物をプリントして下さい。 (Hyperventilationでは血液がアルカリ性、pHの増加になる問題も有り、その事も書いて居るのが多いですので、単純で理解しやすい物がお勧めです。)