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Ground Effect

地面すれすれを飛行すると、飛行機が「ふっと上昇するような、また前に進む様な現象」が発生します。 これを地面に近い所で発生するのでGround Effectと言います。 実際には翼の長さ以下の高度まで降りてくると、揚力(Lift)が増えて、抗力(Drag)が減少します。 地面に近ければ近いほど、現象が強くなるので、低翼機の方が強く感じます。 (訓練中は気合が入って気がつかないかも知れませんけど)

飛行中の飛行機では常に渦を巻くように気流が変化しています。 この渦は翼の長さ(Wingspan)と同じだけ発生します。

飛行中の飛行機(翼)では、気圧の高い下から、気圧の低い上へと空気が逃げます。その為に小さい飛行機でもWingtip Vortexが発生します。 この渦ですが翼の真上では、上から下へと気流を押し付ける様になり、気流が下向きになります。 その為に揚力が後ろ向きに発生して、Induced Dragが発生してしまい、また揚力も減ってしまいます。

左の図では、黒色がFlight Pathで、ピンク色がVortexで押し下げられた気流を示しています。 揚力が傾き、Induced Dragが発生してLiftが減少します。もちろん、この影響は翼端ではかなり強く発生します。 翼の根元の方でも微量な影響があります。

そんな飛行機なんですが、地面に近づいていくると、渦が下記の様になります。

地面に阻害されて、渦の発生が抑えられて、一部分だけに渦が発生します。 すると先ほどのピンクの気流が、それほど傾かなくなります。発生する揚力がより垂直に近い方向になります。 その結果、Induced Dragが減って、Liftは増えます。 

渦が翼の気流を下に押さえ込んでいたのですが、地面が渦を阻害するので気流が後ろに傾かなくなり、Liftの方向がより垂直になります。二つ目の図にあったピンクのライン(気流)が水平方向に変わり、その結果、Liftも後ろ向きから、より上向きに変化します。 

ここらは個人差ですが、リラックスして操縦しているとGround Effectに入ると、フーっと浮く様な感じを覚えます。離陸では逆に重い雰囲気を感じる場合もあります。 まあ、両方とも短い間隔で発生するので感じ方には差が大きくなります。 また、十分な速度があると何も感じないぐらいです。

またGround Effectが翼の長さ分の高さである、と言うのがこの図で理解して頂ければと思います。 それから、Vortexは翼端で最強ですので、地面に近いと急激に増えるとも覚えておいて下さい。 Ground Effectが発生するギリギリの高さだと、そんなに影響は無いのです。

Ground Effectのまとめ

基本はと言うか、元々
1) 渦が出来ると、気流が変わります。
2) 先端での気流が、下に折れます。
3) 気流の変化で Lift Vectorも下向きと言うか後退します。 (Liftが後ろに傾く)
4) すると、Vertical (Lift)の部分が減って、 Horizontal (Induced Drag)の部分が増えます。
これがInduced Dragです。

Ground Effectでは (発生する低高度では)
5) このVortexが地面(Ground)で阻害される。
6) Liftの傾きが軽減される
7) Lift Vectorが元の角度に変わるのでLiftが増えてDragが減る結果になります。
8) 渦が出来るのは、翼の幅分が最大ですので、翼の長さ以下で影響が出てきます。
9) 距離が狭くなれば、影響がもっと強くなります。

実際には小さな変化なのですが、離着陸とか低速の場合はこの差が大きく出てきます。

Ground Effectでの注意:

Liftが増えてDragが減ると言う事で、地面スレスレでは良い様な気がしますが、実際はちょっと違うかもしれません。 注意しなくてはならないのは、速度が特に遅い離陸や着陸の時です。 

離陸の時はGround Effectの分だけで上昇してしまうと、Ground Effectが無くなった瞬間に飛行機が落ちてしまいます。 速度が十分にある離陸でしたら気にする事は余り無いのですが、 Soft Field TakeoffやShort Field Takeoffの様に低速での飛行で離陸してしまう可能性が有る時に注意です。 

Softでは機首をかなり上向けに離陸滑走をしますので、不注意に上昇を始めるとGround Effectが無くなった瞬間に下降や最悪の場合はStallも考えられますので、十分な速度が付くまでは上昇を最低限に抑える必要があります。 またShortでは速度が遅い時を考えて下さい。十分な速度が無いのに浮いてしまうと同じ事が起こります。 また、本当に短い空間から離陸する時では思わず操縦桿を引っ張ってしまいますので、Vxなど定められた速度を保つ必要が有ります。 それと離陸時ではトリムの設定が高過ぎると急に上昇してしまうって事も有るので、頭の動きには十分に注意して下さい。

他の場合ではHigh Density Altitudeで離陸する時です。 Ground Effect内では何とか離陸できる揚力が発生しても、Ground Effectを抜け出ると上昇しない場合もあります。 最悪の場合は滑走路を出た直ぐのフェンスや木に激突するまで、地面スレスレを脱出出来ない場合もあると頭に入れてください。 単に頭を上るのでは無く、加速する事を考えるとか、滑走路の長さが十分なら離陸を止めるとかも賢い選択です。あまり考えたくないのですが、障害物に激突するにしても、上空からよりも地面からの方が生存率が断然に高いです。

着陸の場合でも注意が必要です。 フレア、機上げを行なう時はGround Effectが強い高度で行いますので、操作が早すぎて飛行機が浮いてしまう事があります。 浮いてしまった直後ではGround Effectが無くなり、また速度も遅いので叩き付けられる様に地面に帰ってくる場合があります。適切なアプローチをしていれば、多くは防げるとは思いますが、慣れない飛行機とかだと注意して下さい。 また着陸中にフーっと高度が上がった場合は、Noseを直ぐに下げるなり、Powerを入れるなりの対応が必要です。 時には早いGo Aroundが命を助けるかも。

離陸や着陸など、特に速度が遅い時は注意して下さいね。 Ground Effectだけで浮いている場合も有ります。

関連ページ: Induced Drag Wingtip Vortex (2)


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