Yawing 左に行く現象:
プロペラからの気流が後ろの垂直尾翼に衝突して、その反動で機首が左側に向く事を言います。
回転するプロペラの後方には、プロペラと同じ方向に回転する風が発生します。右の図の様に気流が胴体の周り回転して後ろに流れます。その気流は垂直尾翼(Vertical Stablizer)の左側から衝突し、右側に押し出します。すると機首が左の方に向うとします。
これも、P-Factorと同じ様に機首を左に向うとする物です。 もちろん低速で高出力の時にこの作用は強くなります。
強力なプロペラ後流の写真。
Pitchへの大きな影響: かなり強いです。
またSlipstreamは水平尾翼(Horizontal Stabilizer、Elevetor)に大量の空気を流す事になります。 この大量の空気は水平尾翼とElevatorの働きを強くします。 この作用の為、エンジンの出力を変えるだけで、Elevatorにも影響を与えます。
高出力では気流が増えて、水平尾翼の働きが強くなり、尾翼が下がろうとし、その結果機首が上ります。また、逆に出力を減らすと、気流も減るので、尾翼の働きが少なくなって、尾翼が上り機首が下がります。
この影響はかなり強いので、普通の操縦では常にこの影響が出ます。 でも、この影響と操縦士の目的は同じ方向を向く場合が多いので、実際には強く意識しなくても、貴方の頭が勝手に理解してくれます。
T-Tail(T-字尾翼)を持った飛行機では、水平尾翼を通過するSlipstreamが極小の為、Slipstreamの影響による機首の上げ下げは少なくなります。 影響が無いと言える場合もあります。 でも他の原因で、似た様な現象が起こるので、普通の飛行機よりも強くない程度に理解しておいた方が操縦には楽でしょう。
(T-tailの操縦でも、これを強く意識しなくても大丈夫って事です。 個人的には気にせずに操縦してきました。)
注意と訂正:
なお、この左に向ける力(Slipstream)は、P-Factorよりも5倍強になるそうです。
http://www.aircraftspruce.com/catalog/pdf/13-09032.pdf
Wind tunnel research on conventional single-engine aircraft indicate that about 6/7 of the total yawing moment is produced by the spiraling slipstream and the rest is from asymmetrical thrust,
風洞実験によると、単発機が左に行く作用はこのSlipstreamが6/7で、残りの1/7がP-Factorによって発生するそうです。Slow FlightやStallの訓練で、「P-Factor!」と言って右足を踏む様に説明する教官は厳密には「Slipstream」と言った方がより正しくなります。 P-Factorでも間違いでは無いのですが、航空力学的にはSlipstreamの方が強力です。
ですから、「Left Turning Tendencyが有るから!」と言う教官の方が正しくなります。
恥ずかしい話ですが、私は「P-Factor!」と叫ぶ方です。 ここで訂正してお詫びします。 このサイトでも、「P-Factor!」と平気で書いている部分が有りますが、その時は訂正して下さい。つい最近に別件で上記を教えてもらい、読んでいて、違いを知りました。
私を訓練してくれた人もP-Factor派で、私の生徒も同じP-Factor派にしてしまったかも。 まあ、これでOralに落ちる事は無いでしょうけど、現実はちょっと違うかもと意識してください。 それに飛行教官が「P-Factor」と言って居ても基本的には間違いでは無いので、訓練中は突っ込ない方が訓練がスムーズに行くかも。 余談程度にね。