Critical Engineの発生理由は左右のエンジンが同じ方向に回転するので、中心線から見るとプロペラが非対称に回転する為に発生します。理由をを考える際に4つの要因があり、これらの頭文字を取って、PASTと覚える方法があります。
P. P-Factor
A. Accelerated Slipstream
S. Spiraling Slipstream
T. Torque
回転が同じ方向なのですが、同じ方向な為に飛行機の中心線から見ると、左右のプロペラが逆になります。この非対称の為に、片方のエンジンが故障した場合では左右での差が大きく出てきます。 この非対称がCritical Engine (臨界発動機)を生みます。
この4項目を急に説明すると、混乱を生みますので、最初に簡単に説明させて下さい。 (これだけでも十分かも!? もちろん、回転が左右同じと想定してでのお話です。 NOT Counter Rotating)
P. P-Factor Yawing
これはYawing 機首の向きに影響します。 P-Factorが発生するとプロペラの右側の推力が強くなります。 左右のエンジンでは強くなる場所の距離が中心線から違うので、影響力が変わってきます。
A. Accelerated Slipstream Banking and Pitch
P-Factorが発生すると、その後方により強いPropwashが発生して、翼の上を通過する空気が早くなり、揚力も増えます。 これも左右で強くなる場所が違うので、影響力に変化があります。 下の図を見て下さい。 左右ではLiftが増える場所に差が発生します。 その為、片方のエンジンが停止した時は、この距離の差でRolling バンクさせる作用に差が出ます。
またP-Factorで増加した風量も左右で違いますので、水平尾翼に与える影響にも差が出ます。 水平尾翼はTail Down Forceを作る場所なので、Pitchにも大きく影響が出ます。
S. Spiraling Slipstream Yawing
これはプロペラ後流が垂直尾翼に与える影響が左右では違うからです。 回転するSlipstreamは後方にある尾翼に違った影響(風)を与えます。 これがYawing(Noseを左右に向ける)に影響が出ます。
水平尾翼とラダーはYawingとDirectional Stabilityの大きな要因。水平尾翼への影響はYawingに大きく出ます。
T. Torque Banking
プロペラの回転で発生する反作用で、プロペラの回転方向と正反対に回転しようとする影響です。 プロペラは時計回りで回転していますので、 反作用としてトルクが反時計回り(左バンク)させようとします。
しかし、片方のエンジンが故障した場合は、故障した方向へBankしようとしますが、トルクは左右どちらでも反時計回りです。 その為、時計回りでBankしようとする時(Left Engine Only)はトルクが邪魔をして操縦が楽ですが、反時計回りの方向へバンクする時(Right Only)は、トルクが協力してしまって操縦が困難になります。
以上がCritical EngineのPASTの主な理由と言うか説明です。 イメージをして頂ければと思います。 以上の説明でも十分かも知れません。 次からは不必要と思える程、細かい説明になってしまいました。
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注意:これからの説明はCounter Rotating Airplaneは対象外になります。
Intro : P-Factor : A-Accelerated Slipstream : S-Spiraling Slipstream : T-Torque : Counter Rotating : Summary