Critical Engineは、万が一エンジンが故障した時に操縦や性能に悪影響の大きい方です。 また、エンジン停止直後に影響の大きい方と思う事もできます。
飛行機は左右が面対称 (面対象)ですが、Multi-engineの場合、プロペラの回転だけが違います。
この非対称で、エンジン故障時に悪影響が左右で違って来ます。
故障時に悪影響(操縦や性能)が強い方のエンジンをCritical Engineと言います。
Critical Engineを考える時は、4つの項目があり、頭文字を取って、PASTと表現します
P. P-Factor プロペラの右側に発生。飛行機の中心線からは右プロペラが遠いので、右側だと影響が増大します。
A. Accelerated Slipstream P-Factorでプロペラの右側で後流が増加し、Liftも増加。 これも右側で増大。
S. Spiraling Slipstream 左側からの後流がTailラダーに多くのエネルギーを送ります。 右側ではエネルギー低下
T. Torque 左側のエンジンだけの時はトルクと主翼のRollingが打ち消しあいますが、右側だけだと倍増します。
Critical Engine 臨界発動機を考える時には、 複数の事を考えます。 テコの原理で飛行機の中心線からの距離を考えたり、後流による尾翼への悪影響、そしてトルクとBankingの向きを考える必要があります。
P. P-Factor プロペラの右側に強い推力が発生。 飛行機の中心線から見るとP-Factorは右プロペラの方が遠いので、右側だと影響が増大します。テコの原理で右側のエンジンでは影響が強くなります。
A. Accelerated Slipstream P-Factorでプロペラの右側で後流が増加し、プロペラの右側のLiftも増加。 これも飛行機の中心線から見ると右側のエンジンでの方が遠くになります。 テコの原理で右側のエンジンが強くなります。
S. Spiraling Slipstream 左側からの後流が尾翼やラダーに多くのエネルギーを送ります。右側ではエネルギー低下するのでより多くのラダーが必要。 気流から見ると左側が多くの気流を与えるので、ラダーの効きに差が出ます。 後流が尾翼に衝突する事を考えると、片肺では気流の衝突でYawingを抑える様になります。
T. Torque 左側のエンジンだけの時はトルクと主翼のRollingが打ち消しあいますが、右側だけだと同じ方向にでるのでBanking、傾きが強くなります。
PとAでは飛行機の中心線からの距離で考えます。Sでは後流の尾翼への影響、Tでは傾きの方向で考えます。両エンジンが同じ方向に回転している飛行機では、 PとAは距離の遠い右側が強くなります。SとTでは左側が操縦士を助けますが右側は協力してくれません。
エンジンが一つの場合、右側だけではPとAが悪影響が大きく、SとTでは協力してくれません。 でも、左側だけの時ではPとAは悪影響が小さくて、SとTは協力的です。 右側だけでは操縦が大変ですが、左側だけの時は操縦が楽になります。 楽と言う事は安全で、無理な操作が無くなる分性能も良くなります。性能は主にVmcの事ですが、抗力も増えるので他の性能にも影響を与えます。
上記で書いた様に左がより大事ですのでLeft EngineがCritical Enigneとなります。
なお、このCritical Enigneの最初にも要約したページが有りますので、それも参考に
Counter Rotating Airplaneについて
プロペラの回転方向を変えてこのCritical Enigneと言う考えを無くす飛行機があります。 操縦士から見ると、左右が逆回転ですが飛行機から見ると、面対象(線対称)になっている飛行機があります。この飛行機だと、操縦が大変になるRight Engineの回転が反対になり、片肺での操縦が楽で、左右のエンジンで差が無くなります。 この様な飛行機では、Critical Engineが無いので、PASTと言う考えも無くなります。 (説明ページ)