Constant-Speed Propeller 定速プロペラ (Student Pilot向けの説明)
私たちが操縦する飛行機には自動的にプロペラの角度が変化する
Constant-Speed Propellerがあります。このプロペラでは操縦士が最適なプロペラの角度(Angle of Attack)を選ぶ事が可能で、プロペラが自動的にその角度を守ってくれます。 Fixed-Pitchと違い、幅広い速度で効率的なプロペラの角度での飛行が可能になります。
仕組みが複雑で高価、そして操作もやや難しいため、やや高級な飛行機に搭載されています。 Privateの訓練では通常使いません。 名前の通りプロペラの速度が一定になる様に作られた物です。(飛行速度では無く、プロペラ自体の速度で、回転数を意味します。)
飛行機は速度が速くなると、プロペラに対する気流が変わり抵抗が少なくなります。 一般的な固定されたプロペラでは回転数は、飛行機の速度に比例して早くなります。 回転数が早くなると聞くと、良さそうな気がしますが実際はプロペラの効率が落ちます。プロペラは翼と同じで空気中を移動する事によって推力と言う、揚力を生む翼と同じ働きをします。 プロペラにも迎え角(Angle of Attack)があり、最も効率の良い角度と回転数(速度)が有ります。 速度が速くなると、このAngle of Attackが小さくなって、効率も変わってしまいます。
Constant-Speed Propellerの場合は、この飛行機自体やエンジンの速度に関係なく、回転速度が一定になる様に設計されています。自動的に回転数が一定になる様にプロペラの角度が変わるのです。 この機能のおかげで、飛行機の速度などに影響されずに効率の良いプロペラの角度(Angle of Attack)を維持する事が可能になります。
(左の図)Fixed-Pitchの場合、速度が速くなると、Angle of Attackが小さくなります。 その為、抗力が減って回転数が上がるのですが、効率を保つ事が出来なくなります。 Constant-Speed Propではこの抗力の違いを回転数の変化で感じ取り自動的にPitchを変えながら効率の良いAngle of Attackを維持してくれます。
回転が同じと言う事は、抗力が同じという事です。 抗力が同じならAngle of Attack、プロペラの迎え角も同じですので、速度が変わってもプロペラの効率が落ちる事が殆どありません。 その為に速度の変わらない、Constant Speed Propが高性能機で使われます。
Constant Speedでは内部に色々な部品が有ります。 オイル圧の変化、遠心力やなどで自動的に角度を変える仕組みが出来上がっています。 主にEngineに取り付けられているGovernorと言う部分から送られる油圧の変化を感じ取りプロペラの角度を調節しています。(右の写真)
Governorはエンジンに取り付けられている部品で、エンジンの回転数の変化を感じ取り、それを元に加圧されたエンジンオイルをプロペラ部分に送っています。
Governorの内部にはFlywieghtというオモリが内蔵されており遠心力で回転を測定しています。遠心力(回転)の変動でプロペラに流れるオイル圧を調節しています。
図ではGovernorの内部を簡略して描いています。 Flyweightの動きが分かればと思います。緑色がFlyweightで、ピンク色がオイルの弁を意味しています。 このピンクのオイル弁の動きを元に油圧を変えてプロペラの角度を制御しています。(細かい事は考えずに、原理だけを理解して頂ければ十分です。)
Constant−Speed Propeller Operation
コクピットにはPitch Control (Propeller Control Lever)が装備されていて、操縦士がそのコントロール操作する事でプロペラの角度を調節する事が可能になります。
プロペラコントロールはガバナーにつながっていて、プロペラのピッチを制御する事で回転数(もしくはPitch, Angle of Attack)を変える事が可能です。
手前に押し込むと、Pitchが小さくなって、回転数が上がります。 それを「Prop Foreward」とか「High RPM」と表現します。 逆に手前に引くと、プロペラの角度が大きくなり逆の現象が起こります。これを「LOW RPM」と言います。 何もしなければ、ガバナーの動きで自動的にピッチを変動させ、回転数を守ります。
スロットルを操作しても、Governorの動きで回転数はあまり変わりません。 基本的にはPitch ControlでRPMを制御します。 出力を調節するスロットルはManifold Pressure Guageと言って、エンジンに入り込む気圧を測定します。
(写真では左の計器の左側です。) 出力を測定するには回転数(RPM)が変化をして意味が有りません。 その代わりに、エンジンに入り込む大気で出力を測定します。 その気圧がManifold Pressureです。
エンジン出力を上げる時は、最初にPitch Controlを前にして、そしてスロットルを開けます。
逆にエンジン出力を下げる時は、 スロットルを下げてから、Propを手前に引きます。 Constant-Speedで出力を下げると、回転数が落ちる様な気がしますが、Governorの働きでPitchが小さくなってしまい回転数は変化しません。
これではPitch角が小さいので適切なプロペラの角度が得られないので、Pitch Controlを手前に引いて、プロペラの角度を大きくします。 これで低出力でも効率の良い角度を保てます。設定する量はPOHの性能表を基準にします。
Constant-Speed Propellerを操作する時の注意:
一瞬でも行なっては行け無い操作、状態があります。それは「LOW RPM & High Manifold Pressure (FULL Power)」です。
Prop Leverを手前に引いた状態では、Bladeの角度が大きくて空気抵抗がかなり大きくなります。 この状態でエンジンが大きくすると、抵抗と出力が強烈にぶつかり合って、内部的に物凄いストレスが発生します。 特にエンジンシリンダー内で影響が大きくなりますが、プロペラやエンジンシャフトでも大きな衝撃を受けます。
出力を上げる時は、必ずPropからです。
Higher RPM そして Manifold Pressure UPです。
出力を下げる時は、必ずThrottleから。
Manifold Pressure Down(エンジン低下)、それからLower RPMです。
絶対にエンジンやプロペラに強烈なストレスを与えては行けません。 自信の無い時や焦る時は、必ずProp FULL Forwardです。
以上で、Student PilotさんやPrivateの免許を目指している人はここで説明は終わりです。これ以上は必要性が低い。
検定 定速プロペラ Constant-Speed Propeller
CommercialやComplex機を目指してる人、もっと知識を深めたい人は次へ進んでください。
Constant-Speed Propの説明ページを作っていると異常な程長くなってしまいました。かなり長文です。それでPrivate Pilotを目指している人に合わせてこの最初のページを作りました。多くの人にはこの1ページ目を読んで頂ければ、Private Pilotの試験には十分な知識が得られる様にと考えて作ってあります。(Constant Speed機で受験する人を除きますが)
Commercial PilotやMulti Engine、Complexの訓練を受けている人、もっと、深く!と言う人は次ぎに進んでください。 通常のPrivateではこれ以上の説明は不要と思います。下のページではかなり詳しく説明をしてます。
- イントロのページ 初めに作っていたイントロ用のページです。 次に行きたい方はここから。
- プロペラの航空力学入門編: プロペラの回りでは何が起こってるのか? なぜ、角度を変えた方が良いの? (その1・2・3)
- プロペラの構造 Constant Propellerの場合 (その 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4)
- Propeller Governerってなんだ。 (その 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4)
- Constant-Speed Prop機の操作方法 (その 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4)
- Private Pilot 向け (時間が無い人に。 このページです。)
- ----- 過去のページ ----- 理解が出来ない! と言われた昔のページ。 今見ると確かに私も理解できない所が多い。
Constant-Speed Propは複雑そうですが、理解できれば簡単な仕組みです。 ただ私の国語力では、説明が難しく、かなり長い説明になってしまいました。 また、大事な所を繰り返し説明したりと理解不能な所が埋め込まれているので、かなり間延びしています。